南アルプス、冬の赤石岳

2019年の年末は、リュウと二人で南アルプス「赤石岳」へ行ってきました。


スタート地点は勿論、畑薙第一ダムの沼平ゲート。早朝、ゲート前で出発準備をするも・・・

「あああああああ~~靴忘れたあ~!!」

山を目前にして、なんと私は、登山靴を忘れるという大チョンボ・・・
車の隅々まで探すも、無いものは無し!
「ホント、ゴメン」とリュウに謝ると、「靴取りに行きましょう」と意外にも大人の返事。
リュウにはホント申し訳なかったですが、自宅まで往復5時間かけて取りに行きました。


仕切り直しで、結局、沼平ゲートを昼前に出発。椹島目指してチャリンコ漕ぎです。
この日の南アルプスは、風雪が強まり予報通り稜線は大荒れ模様。時々霰がチラついていました。


東俣林道には、今年甚大な被害をもたらした台風19号の爪痕が。
人や自転車だったら通れるかと思いきや、車道は完全に崩壊。
「どうやって行けば良いのだろう?」と少し悩んでしまいましたが、よく見れば、川底に車の轍が!
現在は、ダム湖の川底が迂回路となっていました(トンネル前~畑薙橋手前まで)。
夏の増水時は、一体どうなっちゃうんだろう?


赤石ダムのバックは、聖岳東尾根。稜線上は、暴風雪で完全にホワイトアウトでしょう。


沼平ゲートから約2時間半で、椹島の赤石岳登山口に到着。標識案内板にチャリをデポし、14時過ぎ出発。
当初の計画では、ここを9時に出発予定でしたが、それを言ったところで仕方が無し。

1/5標識を通過して、林道跡の2/5標識のあたりからは本格的な雪道に。
雪が沢山ないと、今晩と明日の飲料水が確保できないので、最低でも標高2,000mまでは登りたいと思っていましたが、まもなくして日没時間も過ぎ、ヘッデン点灯の歩きに。


登山口から3時間歩いて、3/5標識の地点へ。
時間も17時半、ビバーク適地なので、1日目はここを寝床としました。
雪を集めて水を確保し、やっぱりビヤーで「お疲れ」の乾杯!寝不足もあって、夕飯を済ませると直ぐ熟睡してしまいましたzzz。

翌朝、4時半起床の6時出発。
天気は快晴、山日和となりましたが、標高2,400mを過ぎると一気に雪量が増え、いよいよノートレース&膝高のラッセルに。


3/5標識から、恐らくは2時間で行ける筈の赤石小屋も、3時間かかって到着。
梯子を登って、2階のロフト部分が冬季小屋として開放されております。


赤石小屋から見る赤石岳。予想以上に雪深く、果たしてあのピークに無事辿り着けるのかどうか?


案の定、赤石小屋から先は、深いところで股下のラッセル祭りに。
雪質はサラサラ、アリ地獄にハマったかの如く、モガいてもモガいてもなかなか前進せず、体力だけが消費していくばかり・・・
リュウと交代交代ラッセルしつつ、時間かかりながらも進んでいくと・・・


赤石小屋から4時間もかけて、富士見平に到着。時刻は13時過ぎだというのに、もうヘロヘロ。
ここにベースキャンプを張り、明日は前方の「赤石岳山頂」を目指します。


しかし・・・そうは行っても、この先もノートレース。
核心の「ラクダの背」の手前、標高2769mピーク下までをトレース付けして、明日のピークハントに備えました。


ベースキャンプに戻れば、既にお日様も西に傾き・・・


標高2700mだけあって、すっかり陰ると気温もぐんと下がり、溜まらずテントに潜って宴の準備。
度数の高いホットウィスキーにホットラムで体を温め、今宵も呑んだくれに・・・

3日目、4時半起床。


テントの外へ出てみれば、快晴無風のこれ以上ないコンディション!
朝食&用足しを済ませ、登攀準備して6時過ぎに富士見平を出発。
昨日トレースを付けたトラバース道を黙々と歩いて行くと、やがてそのトレースも無くなって、再びラッセル祭りに・・・


前方に、朝日を浴びた赤石岳。
まだまだ時間はあるとはいえ、このスピードじゃ何時着けるのか?見通しがつかず・・・


2769mピーク下を過ぎたところから、冬季ルートの尾根に登り詰めます。
「尾根に乗ったら、多少(ラッセルも)楽になるんじゃないですかね~?」と、リュウの言葉に半分期待するも、尾根に乗ったところで雪量は変わらず・・・


振り向いて、2769mピーク。
日当たりの良い場所で一息入れると、よく見れば下から3人程、私達の跡を追って登ってくるではありませんか!
トレースが有るのと無いのでは、登るスピードも一目瞭然。あっという間に追いつかれてしまいました。


「いや~トレースありがとうございます!」と挨拶もそこそこ、早速ラッセル祭りに加わっていただきやした!
いやはや、ラッセルは多人数に限ります!
3人とも昨日は赤石小屋に泊まり、赤石小屋から富士見平までは、トレースのおかげで1時間半で登って来れたとの事!私達は、昨日4時間もかかったのに~!


まだまだ遠い赤石岳。
5人になったところで、各段にペースが上がる訳でも無し。休息時間が取れて体力温存にはなりますが・・・


やがて核心のラクダの背の前へ、後から登られてきた3人はここで撤退。私とリュウは、勿論「Go」です。


残置のFIXロープが垂れ下がっているが、勿論テンション掛けられる代物では無し。
ロープを出して、私リードで2ピッチ程登りました(ちなみにロープは30m)。
岩への取付きがちょっと嫌らしく、そこを越えれば岩とミックスの雪稜。ハイマツと凍り付いたFIXロープに支点を取りました。


核心のラクダの背を越えてヤレヤレするも、ピークの小赤石は、まだまだ遠い遠い!


かなり時間が押していて、既に11時。12時に小赤石に辿り着けたとしても、あの赤石岳までは往復プラス2時間。
この地点で赤石岳のピークは時間的に厳しく、諦めました。


目指すはあの頂、小赤石。しかし、まだまだ膝高のラッセルは続き、時間も11時を過ぎ・・・
一体何時に着けるのだろうか?と、時間との勝負となりました。


でも、何とか踏ん張り・・・


無事、小赤石の山頂へ。凄い達成感と感動・・・
いつもポジティブなリュウに励まされ、諦めずに登る事ができました。


アングル悪い&逆光ですが、二人そろって記念の1枚。


あわよくば、あそこも縦走できたらいいな~なんて思ってましたが、この雪量じゃあと2日必要でした・・・と言っても明日の天気は下り坂。


景色を堪能するのも束の間、下山開始。またあの怖い、ラクダの背を通過しなくてはなりません。


そのラクダの背は、ダケカンバの幼木を使って、2ピッチ懸垂下降。


2ピッチ目は、30mロープでギリギリでした。40mロープあったら安心かも。
一番心配していたラクダの背の下降もスムーズに行き、無事降り立つことができました。


振り返って、自分たちが付けたこのトレースが、何だか誇らしげに思えたり・・・
恐らくトレースが付いて難なく登ることができていたなら、この満足度も、もしかして半減していたかも知れません。


ピークから2時間半で無事、富士見平まで戻ることができました。
登りは5時間20分、下りは2時間半、やっぱりトレースが有るのと無いのでは大違い。
明日は天気が下り坂ということもあり、富士見平で張ったテントを撤収し、日没前までに無事、赤石小屋まで下山しました。


冬季小屋は、貸切&超快適。タヌキ寝入りのリュウをパチリ。
ピークを踏むことができたこと、もうラッセルはしなくて良いという安堵間で、アルコールが入れば一気に眠気が来て、酒も進まず寝てしまいました。。。

4日目・・・


予報通り、低気圧の通過で天気は朝から雪。富士見平のテント泊じゃなくて良かった~。
しんしんと降る雪の中、黙々と山道を下り・・・


椹島まで無事下山。椹島も東俣林道も、そして私達のチャリも真っ白。


リュウのチャリがパンクするハプニングもあったが、昼前には沼平に到着し、私達二人の4日間の山行は無事終了しました。
とても充実した山行で、今年を終えることができました。
靴を忘れた時は、どうなることやらと思いましたが、諦めずに、背中を後押ししてくれたリュウに感謝!
2020年も、良い年にしたいですね。
                                                                                                        By モリッシー