夜なべ仕事の黄蓮谷左俣

2017年12月28日(木)から30日(土)に黄蓮谷左俣へRYU君・モリッシー・トコロの3人で行ってきました。この3人はGWの3人組だ。実は、ここの投稿がわからなくなって初めに山猫自転車店に書いてしまいましたので、ちょっろ二番煎じになってしまいます。でも、RYU君とモリッシーさんが何か追記してくれるかもしれません。

28日 静岡5:30--竹宇駒ケ岳神社8:30--五丈小屋跡13:50ーー七丈小屋15:15
29日 七丈小屋6:40--黄蓮谷8:10--左俣滝終了15:00--主稜線八丈18:15--小屋19:45
30日 小屋9:00--
竹宇駒ケ岳神社13:15

 静岡を5:30に出た。モリッシーさんに電話したら寝起きのさえない声だった。ちょっと待っていま仕度するっていう感じ。本当は寝坊はRYU君の得意技。萌黄色のFITは順調に走ってくれました。駐車場はガラガラ。天気は良いけど風が強め、天気ば予報によれば稜線上で北西風20m以上とか・・・。

▼竹宇甲斐駒ヶ岳神社を後に出発です。橋の向こうは山の世界

▼背中ばかりなのは先頭を歩くトコロをモリッシーが後ろから写すから

▲駒ケ岳まで7時間!ここまでですでに2時間近く歩いていたので、七丈小屋までは5時間くらいか・・・な、ながい。

 この日のメンバーの中でどう見たって私が脚力的に最弱である。というわけで他の二人を先行させると、どんどん行ってしまいすぐにヒーヒーいうことになりそうなので先手を打って先頭を歩くことにしたのであった。さすが、こういうつまらぬことだけは抜け目ない。それにCLとして計画を立てた私は、フフフ俺が一番軽くなるように荷物を分配しようという黒い心の持ち主でもあった。

▼刃渡りです。手前でアイゼンをつけた。

▲昨年より雪は多め。落下するとシャレにならない場所。でも、昔は鎖などなくて恐々と渡った記憶がある。三十数年前の話です。

▼黒戸尾根名物の梯子。刃渡りの次に連続して出てきます。
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▼梯子が終わると刀利天狗(とうりてんぐ)の祠が出てくる。またしつこく登りが続く。
イメージ 5 この頃になると、もうバテバテ。刀利天狗からしつこく続く登りを登ると今度は長いトラバース状の道になる。五丈小屋跡手前は下りが入るのですが、なかなか道は下ってくれない。ほとほといやになって到着となった。で、行く手にはぽっこりとピークがあってこれを越えていくのかと思うとがっかりする。13:50到着なので私としては上出来のペースで歩いたわけだ。疲れてここで泊まっていいにしようと言いたくなってしまうが、言えるわけがないのだった。
途中小屋のスタッフという女性が下ってきた。昨日・一昨日と降ったのでトレースはない、左俣は雪も締まっていて大丈夫だと思う、ということを聞いた。大丈夫だと思う、というのはたぶん雪崩のことだ。トレースがないということはラッセルをしなければならない。まぁ、それはわかっているけれど人から言われると、また、帰りたいなぁと思ってしまう。それでいて明るくて元気な若い女性に声をかけられた私はしばらく歩くペースが上がったりするのだった。さすがモリッシー、すかさず「トコロさん、今の娘、タイプ?」と言ってきた。しかし、現実は厳しくすぐに音を上げてしまう私だった。
へとへとになって一体いつ到着するのやら、・・・と思っていると、突然七丈小屋が出現した。

 ▼やっと七丈小屋到着。喜ぶRYU君。

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 小屋の手続きが終わりテントサイトの場所を聞くと「100mほど離れています」という。モリッシーさんはこれを標高差と思いこみ愕然としたらしい。飼い主は距離だと思った。その通り距離であったが、密度が濃い100mで小言の一つも言いたくなった。誰に言ったらいいのかわからんが・・・。

▼RYU君が持参したスコップで整地してテントを張る。

イメージ 7 長いアプローチがやっと終わった。僕たち3人はやっとしつこい黒戸の登りから解放された。とりあえず明日まで歩かなくていいわけだ!

2日目。4:45起床。モリッシーとRYU君に起こされた。順調な準備であったが6:00出発予定が、やっぱり30分以上遅れた。

▼翌朝の出発。白い建物はトイレ
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▼六丈沢に沿って下る。
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 昨日の疲れで足が重くて重くて、何か理由をくっつけてやめたいくらいだったが、天気は問題なしだし怪我をしているわけでもないし、疲れているだけで体調も悪くはない・・・う~ん、ついてない、歩くか。ルンゼ右の尾根上などを下ると時々トレースらしきものが出てきた。谷との出合は坊主の滝の延長で凍っている。左にルンゼを渡り、ギャップを谷に下りるが最後意外と悪くて5mくらい懸垂した。このくだりで3回ほどこけた私は、本日も弱気であった。

▼坊主山に日があたる。けれど谷はずっと日陰。

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▼最初の滝。傾斜もなく簡単に登れる。15mⅡ
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▼トレースなくラッセルで進む。稜線は、はるか向こう。
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二俣を左に進み三段50mⅢの滝はフリーでどうということなく越えた。滝と滝の間が必ず雪を踏んでの歩きになり順調に進んでいくのであるが速度は遅く時間がかかる。

▼30mⅢの滝。やわらかい氷で登りやすい快適な状態であった。

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わかっちゃいるけど抜けるとまた雪。
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▼先行するRYU君を追いかける。谷は右へ屈曲する。
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▼50mⅢ。傾斜はない。易しいので、私のリード。
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▼2PめはRYU君に先頭交代。ザイル対策です。
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▲傾斜はなくて問題ないが、滑りだすと止まらずにずーっと下まで落ちていきそうなので、ザイルを出した。クラストしていたり、スカスカなところがあったり氷自体はあまりよくない。

▼小石のような大岩のむこうに60mⅤの大滝。本日のメインキャラ
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▼メインキャラに対しては、エースRYU君のリードで対抗

イメージ 19▲標高が高くなって、氷が固くなって割れやすくなってきた。飼い主はセカンドであったが結構厳しかった。情けない手袋だったせいか手がかじかんでしまい、ビレイを取るときスクリューを落下させてしまった。あの高価なスクリューは別れの言葉もなく離れていった。ここを下って拾ってくる力はなかったのが涙である。

▼2P出足で垂壁を登る、リードのRYU君。強風でチリが落ちてくる。
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▲この垂壁は無理だと分かったのでランニングの右を登った。スクリューを外すのさえ面倒だった。この滝を抜けるのに1時間以上かかったのではなかろうか…。

▼最後の20mⅣ。メインキャラの次にまたけっこうな滝が出てくる
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▼やっぱり、RYU君のリードで突破。
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▼滝が終わったので、一息入れる。
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 時間は遅れ気味。これは夜なべだ、と覚悟してヘッドランプを確認した。お道具を一旦片付けて、これからのアルバイトに備え行動食を食べお湯を飲んだ。気前よく明日の分にまで手を出して食べた。危険なところはないが、体力的にはこれからがつらくなるなぁ…。という状況下の我々二人に対し、あのピークハンター・モリッシーは「甲斐駒山頂行きますよねぇ」というのだった。

▼詰めにかかります。まずは緩くなった谷をじっくり登ります。
イメージ 24 この後、進路は左に左に進みます。下手に行くとラッセルがやたらと深くなってしまう。尾根状は浅いが吹き溜まりは胸や腰まで沈んでしまう。もうへとへとなので(正確には朝からへとへとだが)すぐ手をついてしまう。
▼樹林の中へ入る。
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 3人で先頭交代をしながら進む。運がいいと割合しまった雪で沈まないが、深いところはずぼっと落ちる。そうすると抜けるのに一苦労であった。膝で雪を抑えたり、とにかく上の雪を足元に落としてにじり寄るような速度で進む。
▼ヘッドランプ点灯。ラッセル。開き直ってかえって元気になったりして。
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 月明かりの中に薄ーく稜線が見えた。一本の線が通っている。あそこまで行けば終わりだ!と確信のない楽観。遠近感はないので遠いのか近いのかわからなかった。尾根に出たRYU君が「いいものを見つけました」と声を出した。尾根の上にはトレースがついていた。そして山頂にはヘッドランプが動いていた。終わったー!そこでしばしRYU君は周辺を見まわしていたが、私はそそくさと下り始めた。そう、モリッシーが稜線にあがって「さぁ、山頂へ行きましょう」と言い出すとまずいぞぉ、と思ったからだった。18:15であった。ここから七丈の小屋までは短い階段が1か所あるが、安定した簡単な下山であった。夜に加えて風が強くトレースが消えたりするので変な方に下りないようにするだけです。
突然、平らなところに出た。テント場である。ところが我々のテントがない。うわぁぁぁぁぁぁぁ、風で飛んで行ってしまったかぁ、と思ったがこれはいくつかあるテント場の一つで我々はもっと下に張ったはずだ。案の定、次のテント場が出てきてこの日あがってきたパーティのテントが設置されていた。もちろん我々のテントもそこにあった。
▼3日目、テントを撤収して下山する。
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 ひたすら4時間下って竹宇駒ケ岳神社に着いた。私にしては、なかなかの速度であった。

 先週、RYU君とIDさんと広河原沢に入ったとき、一緒になった二人組が「甲斐駒左俣、すっごく快適でした。6時間で抜けました」と言っていた。特別アイスが上手な二人組という感じでもなかった。6時間で稜線まで出られるんだったら、なんだ簡単じゃん・・・と思った。帰ってからモリッシーの主張通りに左俣にしたのだった。この時RYU君は滑滝沢を主張していた。全装のアイスなど無理だと思った私は、ためらわず左俣。初日にこの判断の正しさを実感した。七丈小屋に着くころ、我々は3人揃ってくたくたのへとへとになり太ももがぴくぴくとつりそうになった。すでに書いたように、私は2日目になっても思ったほど回復していなかった。メインの大滝はRYU君のクライミングで本当に助かった。礼を言いたい。文中のモリッシーの「山頂に行きたい」というのはもちろん作り話。強力な足を持つ彼からすればそのようにいっても良さそうだが、彼もこの日はラッセルで参っていた。私はといえば、かなりのラッセルをやったがRYU君に「暗くなってからが強かった」と冷やかされた。そりゃそうだ、夜の仕事だから・・・。
なお、写真はすべてモリッシーさんによります。ありがとうございました。(トコロ)