困憊の唐幕左方ルンゼ

3月20日に会長・トシゾー・ツノッチ・トコロで唐沢岳幕岩左方ルンゼに行ってきた。当初山中1泊2日の予定を翌日荒天の予報から日帰りに変更しての行動となった。写真はトシゾー報告をご覧下さい。

5:00出発・・6:30ダム・・9:00大町の宿・・10:10取付10:30登攀開始・・14:15終了同ルート懸垂・・16:10下山開始・・19:30下山

4時起床の5時出発。予報通り天気はよいが気温が高くて何となく気持ちが悪い。背中のガチャがズシリとこたえるので、ツノッチにザイルを2本もってもらうと、ちょっと不服そうな感じであった。彼は昨年のチンネのメンバーなのにポーターとして自覚が足りないのではなかろうか・・・。

ダムから沢沿いに進むとアルミ梯子付堰堤が出てくる。写真で見るとすごく高そうだが、実物はしょぼい。足の長いトシゾーは石を一つ置くと梯子に飛び移った。次に足の長いツノッチは負けじと飛び移るも水に片足がつきバシャッとはねた。足の短い私は渡ろうとしたが、これは落ちると思い石を入れた。そうしたらもっと足の短い会長がもっと石をもってこいという。足場をつくって短足組が梯子に飛び移った。金時の滝は左のルンゼを上がった。両側の壁の雪はすでに落ちていて、雪崩は警戒する必要なしの状態。

大町の宿は超豪華岩小屋かと思ったら、デブリに埋まってかこれまたしょぼい。錫杖の岩小屋のほうがずっといい。我々は、もしかしたらF2もしょぼいのではなかろうかと思い始めたのだった。B沢にはいると、デブリの上を歩く。雪が落ちたあとだからいいが、早い時期の入山はスリルあるだろうなぁ、と思った。

左方ルンゼは名前の通り壁の左、一番奥。「ありましたよう」という先行したトシゾーの声がうれしい。「階段状」とか言っている。思った通りしょぼくなっていた。登攀前は無敵のクライマーである私は、これなら登れそうだと思った。2パーティで出発し若者組のトシゾーが取りかかる。F2前でテラスをつくり後続を待っていた。セカンドのツノッチが到着すると「疲れちゃったからF2リードして」と言っていた。「エエエーッ!」という叫びが聞こえてきた。ツノッチの”人殺しー”と言いたげの叫びだった。一大決心をしたツノッチは、左から取り付き少し上がって大苦労の末右へトラバース気味に上がった。取り付いてみると氷の状態が悪く階段状のでこぼこは登りにくいことおびただしい。地味にいやらしいF2である。ツノッチのナイスクライミングであった。やっとこさ4人F2を越えた。

これで、今日のクライミングはおしまい、という感じ。天気がやたらと暖かく何となくクライミングを続けた。登っていく時、下降できるか周囲の状況を見ていったが、立木を使って問題なく懸垂下降ができることもわかった。F2以後は見通しが立ち気楽であった。でも緩いとはいえルンゼを直登するクライミングは体力的にしんどい。お決まりの高瀬ダムが晴天の空の色を映している。

最後の懸垂は岩にシュリンゲをかけてポイントをつくった。その時背中から音もなく落ちてきた雪の固まりが左肩に当たった。「痛」と叫んだらツノッチは頭を押さえているしトシゾーにもあたったようだ。しかし、会長だけ平然と「大丈夫か」と言っている。どうしたことか、いつも会長には当たらない。不幸中の幸いで雪でよかった、氷や石だったらひどい目にあっただろう。

水を吸った重くなったザイルを2本背負って下山を始めた。肩にズシリとくる。緩くなった雪は歩きにくい。消耗しきって駐車場の車にたどり着いた。14時間半の行動であった。おかげで今日は筋肉痛。