北アルプス・剱岳~チンネ左稜線その②

チンネ左稜線



翌朝4時起床し、簡単な食事を済ませていると既に出発するパーティーが!
日の出前から取り付くなんて凄い!自分達も5時過ぎには出発します。
徐々に日も出始め空が明るくなってきました。
左稜線を見上げると既に2パーティー取り付いているようです。



取り付きのテラスに到着した時には、自分達パーティー以外はいなかったので
ゆっくり身支度出来ました。と思いきや!上から「ラク!!!」の声が!
上を見上げると自分目掛けて拳大の石が落ちてきます。
「ゲゲッゲゲッ!!」慌てて身をひるがえし、数十センチしか違わない所に落石が落ち、
砕け散った小石が体に当たりました。
取り付きからこれでは先が思いやられます。落石だけは勘弁です。
ベテランコンビのK会長とKさん組と若手コンビのTさんと自分でつるべで登る
ことにしました。
朝から体が硬くて動かないのに1ピッチ目をリードすることになるとは・・・
クラック沿いに怖々登りました。



2ピッチ目の取り付きから下を見ると、もう次のパーティーが準備しています。
三の窓からも続々とパーティーが下りてくるので、ゆっくりしていられません。



2ピッチ目はTさんのリード。適当に登りやすい所を登ります。



4ピッチ目だったかしら??すっきりとしたフェースを登ります。
出だしが難しかったですが、その後はスムーズに登れます。



徐々に高度感が増してきます。このチンネ左稜線はグレード的にはⅢ級。
核心部がⅤ級ですが、おおむねバットレスの4尾根と同じでだろうと考えていたら、
4尾根より壁が立っています。もうTさんと自分の二人はいっぱいいっぱい!!
本格アルパインクライミングはバットレス四尾根以来の2回目!しかもリードは初めてですから!



ちょっとずつ体も慣れて余裕が出てきました。目の前のフェースを見上げて体を奮い立たせます。



何ピッチ目なのか数えていないので分からなくなってしまいましたが、
このフェースは自分がリードしました。
ここで小休止している先行のK会長Kさん組から自分達が先行で登ります。
ホールドもガバで思ったよりも壁が立っていなかったので、意外と簡単でここは50m一杯ザイルを
延ばしました。
見下ろせばイヤ~絶景ですね!!天気も良くて最高です。



フェースを登りきるとリッジに・・・このリッジが凄まじく怖い!!
両側が切り立っているので下を見ると目眩が。。。
そしてチンネ左稜線の核心と言われているT5小ハング「鼻」が目の前に!!
クライミングシューズではなく登山靴で登攀していた頃はあぶみを使って越えたそうです。
ここは自分がリード!この核心部をリードで登らないと!!気合い十分!いざ!!



昔はあぶみで登っていたせいか、やけに残置ピトンが多いような・・・
目の前にハーケンがあると掛けたくなるのが人情。
小ハング手前でヌンチャクを掛け過ぎてしまいました。
ホールドも豊富で、スメアリングが良く利いてフリクション抜群でなかなか楽しい!!
そして小ハングでは目の前にお助け紐が・・・
このお助け紐が無くても何とかなりそうでしたが、目の前にあれば使いたくなるのがサガですよね~
そして50mロープ一杯でピッチを区切りました。
Tさんは余裕のVサインでカメラにポーズをくれました。

そしてここからが大変でした・・・

核心部
を越えてもう難しい所はないとガイドブックに書いてあったので
緊張が途切れもう終わりだろうと登っていくと目の前にピナクルが!!
壁を登ることには慣れていますが、このナイフリッジを歩くのは全くの不慣れ!!
両側がすっぱり切れ落ちている高度差300mをトラバースするのはかなり精神的に良くありませんでした。
なので、余裕が無くなり写真を撮ることも忘れてしまいました。



小ピナクルを二つか三つ越えてようやくチンネの頭終了点が見えてきました。
あ~長かったチンネ左稜線もこれでようやく終わりです。



Tさんはクライマーズハイ状態なのか、自分は怖くて出来なかったチンネの一番てっぺんに立ちました!
凄すぎる!!!ちょっと腰が退けてるのは御愛敬!



自分達が到着してから少しで、K会長Kさんも登ってきました。
写真で見るとチンネの頭って切り立っていますね~



チンネの頭から懸垂下降するのと思いきや、踏み跡が鞍部に向かって伸びています。
登山靴に履き替え僅か15分ほどで三ノ窓に向かうガレ場に到着してしまいました。
心情的に微妙ですね。



三ノ窓でお昼にしてテントを撤収、そしてチンネの頭から下りてきたガレ場をまた登り返し・・・
この急登がまた大変!しかも結局ザイルは二本背負って、テントも担いで重量増!
う~ん厳しい!!!
そして鞍部に到着し掛かった時に、事件が!!
上からの登山者が落とした落石が、自分の左くるぶしに直撃!
直撃した瞬間は痛くてうずくまってしまいました。
痛みはあるけれども、骨には異常が無さそう。
K会長、Kさんが心配してくれはしましたが、誰1人「荷物を少し持つよ。」と優しいお言葉を
掛けてくれなかったのは残念。



痛い足を引きずりながら、際どい北方稜線を進み、剱岳本峰を目指します。
しかし本峰を越え、今日中に剣山荘まで行くのは難しいかもと頭によぎります。
今日は絶対にチンネ左稜線登攀の成功を祝ってビールで乾杯したいのに!!!



結局、本峰まで何とか届きましたが時間切れ。ヘッデン覚悟で剣山荘を目指すことは難しいと判断し、
山頂直下の平らな所でビバークすることになりました。

剱岳本峰山頂直下でビバークするなんて考えもしませんでしたが、雪渓があり何とか水を得ることが
出来ました。
明日こそ本当に帰れる!!それだけが心の支えです。
今晩は自分一人だけツエルトで寝ることにしてゆっくりと熟睡することが出来ました。
隣のテントではK会長KさんTさんの談笑が遅くまで響いてましたが・・・

つづく・・・