5月18日金曜日午後3時。山梨県河口湖畔の大池公園で号砲が鳴り、男女合わせて852人のトレイルランナーが一斉にスタート。48時間に及ぶ壮絶な戦い、そして長く濃密な旅が始まった。僕はその光景を見ながら、今までに感じたことの無い興奮と感慨にふけっていた。「とうとう始まってしまった・・・」
3年前、2009年8月末。僕はフランス南部のシャモニーにいた。ヨーロッパアルプス最高峰モンブランを一周する世界最大のトレイルランニングレース「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」のロケを始めるためだ。それまで山岳にもランニングにもほとんど興味のなかった僕がこのレースのドキュメントを作ろうと考えたのは、これが単なるスポーツではなく「旅をしながらの闘い」だと感じたからだ。閉じられたフィールドの中で競い合うのではなく、飲み、食い、排せつし、時に眠り、あるいは倒れ込み、家族や仲間の声援を受け、自分の肉体と時間をマネジメントしながら進み続ける。かつてのめりこんでいたパリダカなどのオフロードラリーと通じるものがあり、そこには極限と対峙(たいじ)したときにあらわになる人間の本性が見られるはずだ、と確信したからである。
しかしロケは難しい。車もバイクも走れない山道でランナーを撮影するためには、カメラマンが走るしかない。それを実現したのは3人の“ランニングカメラマン”だった。彼らは選手と同等の走力を持つアスリートで、数キロの距離ならばハンディカメラを持ちながら追走・併走し、さらにインタビューまでしてしまう。これは画期的なことだった。なぜって、これまで“競技中の選手にインタビューできるスポーツ”なんてなかったでしょう? 苦しみにあえぐ選手に「あとどのくらい走れますか?」なんてマラソンでは聞けっこない。その臨場感あふれる接近撮影により、新たなスタイルのスポーツドキュメントが誕生した。(と勝手に自負している)
そしてさらに、このレースには、一つの競技の中に全く違うカテゴリーの2種類の挑戦があることを発見した。100マイル=約160キロが長距離トレイルランニングの一つの基準だが、一流トップアスリートはその距離をほぼノンストップの20時間前後で走ってしまう。しかし多くの一般ランナーはその2倍以上の時間がかかる。ランニングとは言っても険しい山道はほとんど歩きだ。しかし決して楽なわけではない。制限時間の中、2晩徹して歩き続けなければならないからだ。長距離を速く走り続ける難しさと、長時間眠らずに歩み続ける苦しさ、別次元の苦闘がそこにあり、撮る側にとってはその両方とも魅力的なものだった。「なぜこんな苦しいことをするのか?」素朴な問いかけに、年老いたスイス人のランナーが答えた。「それは私が動物でなく人間だから。私たちには精神がある。」
しかしロケは難しい。車もバイクも走れない山道でランナーを撮影するためには、カメラマンが走るしかない。それを実現したのは3人の“ランニングカメラマン”だった。彼らは選手と同等の走力を持つアスリートで、数キロの距離ならばハンディカメラを持ちながら追走・併走し、さらにインタビューまでしてしまう。これは画期的なことだった。なぜって、これまで“競技中の選手にインタビューできるスポーツ”なんてなかったでしょう? 苦しみにあえぐ選手に「あとどのくらい走れますか?」なんてマラソンでは聞けっこない。その臨場感あふれる接近撮影により、新たなスタイルのスポーツドキュメントが誕生した。(と勝手に自負している)
そしてさらに、このレースには、一つの競技の中に全く違うカテゴリーの2種類の挑戦があることを発見した。100マイル=約160キロが長距離トレイルランニングの一つの基準だが、一流トップアスリートはその距離をほぼノンストップの20時間前後で走ってしまう。しかし多くの一般ランナーはその2倍以上の時間がかかる。ランニングとは言っても険しい山道はほとんど歩きだ。しかし決して楽なわけではない。制限時間の中、2晩徹して歩き続けなければならないからだ。長距離を速く走り続ける難しさと、長時間眠らずに歩み続ける苦しさ、別次元の苦闘がそこにあり、撮る側にとってはその両方とも魅力的なものだった。「なぜこんな苦しいことをするのか?」素朴な問いかけに、年老いたスイス人のランナーが答えた。「それは私が動物でなく人間だから。私たちには精神がある。」
その時の主役、世界3位となった日本のトップランナー、鏑木毅とは、その後も親しい付き合いが続いた。アスリートであると同時にトレイルランニングというスポーツの先駆者でもある彼は、100マイルという超長距離を走りきることで人生が変わることを体験し、その実感を多くの人に広めたいと考えていた。そのための目標が“モンブラン”を日本でも実現することだった。それをできるフィールドは一つしかない。「富士山一周」。鏑木が口にした夢に僕はどんどん引き込まれた。もちろん、鏑木一人だけの力でできるわけではない。数多くのスタッフや地元のボランティアの皆さんの多大なる協力があり、2年がかりでようやく実現したのだ。そして僕はこの壮大なイベントを、モンブランよりももっと密着した視点から伝えたいと考え、5人に増えた“ランニングカメラマン”をはじめ、総勢20台のカメラで追いかけてもらった。
それでも、ここに起こった人間ドラマをすべて記録することは不可能だろう。しかし、トップランナーでも、ラストランナーでも、走り続けた人たちの苦闘と達成感は感じてもらえると思う。そして次は自分も体験してみたいと考える人も多いはずだ。河口湖に鳴り響いた号砲は、皆さんの新しい挑戦の扉を開くかもしれない。
<放送予定>
BS1スペシャル「激走! 富士山一周156キロ ~ウルトラトレイル・マウントフジ~」
BS1 6月15日(金)午後11:00~午前0:49
BS1 6月17日(日)午後6:00~7:49 (再放送)
*いずれも、ニュースによる中断があります
BS1スペシャル「激走! 富士山一周156キロ ~ウルトラトレイル・マウントフジ~」
BS1 6月15日(金)午後11:00~午前0:49
BS1 6月17日(日)午後6:00~7:49 (再放送)
*いずれも、ニュースによる中断があります
番組概要はコチラをご覧ください。
※参照情報: BSコラムweb版 番組知っとく情報BS1スペシャル
「激走! 富士山一周156キロ ~ウルトラトレイル・マウントフジ~」
より。
より。
今回は、山家の端くれとしてSTYに参加しましたが、記者の方々が写真や動画付きの、
とっても素敵な構成で関連レポートを立ち上げていますので、合わせてご覧下さい。
3、 動画も交えてお楽しみ下さい。 http://onyourmark.jp/2012/6/utmf/28203
※参照情報;株式会社アルティコWeb版(On your Mark)より抜粋。
以上、文責 奥山耀規