南アルプス深南部、中ノ尾根山・黒沢山

 

11/11~12の会山行は、昨年に続いて「南アルプス深南部」の藪山を歩いてきました。

朝4時半に新東名の藤枝PAに集合し、浜松浜北ICを経て一路、水窪町へ。
この日は「台風並みに発達した低気圧の前線通過で、朝方にかけて一時雨が降る・・・」
という予報の通り、浜松へ着いたとたんに強い雨が降りだしたが、水窪を過ぎ、白倉林道のゲートに到着した頃には雨も止んで、天気は回復方向へ・・・


このゲートから、長い長い林道歩きが始まる。7時半前に出発!


ゲート近くの紅葉は、丁度最盛期を迎えていました。


ゲートから30分程歩くと、「黒沢橋」という古びた赤い鉄橋が現れる。かつては車道だったこの橋も、この先にある黒沢林道の崩壊で廃橋となり、今は橋板が腐って、所々穴が空いている。
明日(2日目)は、黒沢山からの下山ルートとして、最後はこの橋を渡る予定だが、ここの通過も、きっと気が抜けられないだろうな~。


林道を歩いているうちに、稜線にかかっているガスも消えて、そのうち青空になるだろう・・・と思っていたところが、また雨が降り出し、テンションダウン。


ゲートから2時間以上歩いて、ようやく白倉川にかかる「白倉橋」が見えてきた。
計画では、この橋の右岸側にある梯子から入って踏み跡を辿り、白倉山から県境稜線に乗るつもりでいたが・・・肝心の稜線はガスガス、そして爆風・・・
仕方なく、安全を考慮して白倉山は止めて、更に1時間ほど林道を歩いて「中ノ尾根山登山口」から登っていくことにしました。


途中、古びた営林署小屋でしばらく一服。すっかりくつろぎモードになってしまったが、外に出てみると・・・待望の青空が!
雰囲気の良さそうな白倉山の稜線も見えてきて「行けば良かったかな~?」などと、ちょっと後悔もしたが、林道も既に詰めていたし、会山行だからあまり無理もできず、更に林道を登って行きました。


やがてというか、ようやく「中ノ尾根山登山口」に到着。ゲートを出発してから既に3時間半・・・長っ。


登山道は、緩やかな尾根道で踏み跡も濃く、迷いそうなところもありません。やがてガレ場が現れ、その縁を歩いて行きます。


ガレ場からの展望。稜線にかかっていたガスも消え、明日縦走する黒沢山までの稜線も、見ることができました。


更にガレ沿いを登って行くと、頭上に「2214峰」らしきピーク。

 
このあたりから、笹の背丈が高くなり、踏み跡も不明瞭となった。古い「中ノ尾根山」と書かれた標識。


藪山大好きっ娘?のE藤さん。ほっかぶりがなんともお似合い!えっ、お嫁にいけない?


ちょっと笹漕ぎのアルバイトもありましたが、無事稜線へ。そこには、緩やかな裾を持つ中ノ尾根山が。立ち枯れの木に一面の笹薮、人工物は一切ないこの雰囲気こそが、深南部だ。


ここはもう、適当に突っ込んでいきます。


正面には「信濃俣~大根沢山~大無間~風イラズ」の稜線、手前の山は孤高の名峰「合地山」。


北西風の影響を受けないヌタ場らしき窪地を見つけ、そこを寝床としました。


寝床も確保できたことだし、空身で中ノ尾根山の山頂まで行ってみることに。
風はますます強くなり、気温も下がってきて、上空もなんだか雪雲が・・・


中ノ尾根山のピークはだだっ広く、笹も低いのでここでビバークも可能。


テンバに戻ってやることと言えば、やっぱり呑むことでしょう!
ビールにウィスキーに日本酒と・・酔いもほどよく回り、寒かった割には熟睡することができました。

翌朝・・・
未明まで吹いていた強風も治まり、天気も快晴。絶好の山日和となりました。しかし、さぶう~っ!


テンバからのご来光。早起きして、朝日を浴びると体もすっきり目覚め、体内時計は補正されて自律神経もシャキッとします。
出るものは出たし快腸、今日も体調は快調。トコロ会長のしゃべりも快調・・・なんのこっちゃ?


中ノ尾根山にも陽が灯りました。


深い原生林で覆われた寸又川上流部の谷は、一面雲海。


朝飯を済ませテント撤収し、6時半に出発。


テントを張ったコル付近から2214峰あたりは、胸高の笹薮。初っ端から笹漕ぎで「これは先が思いやられる・・・」と、トコロ会長がポツリ。


2214峰ピーク付近からの眺め。2214峰を過ぎると笹の背丈は落ち着き、歩きやすい尾根道となった。笹の中には倒木が隠れているので、脛を打たないよう注意が必要だ。


振り向けば、バックに中ノ尾根山と光岳。光岳はまだ冠雪していないようでした。


所々、こういう標識やピンクの目印もあり、迷うこともないでしょう。


展望の良い細尾根からは、これから行く黒沢山も見ることができました。
南西方向に延びる、更にその奥のなだらかな山が、シャウゾ山かな?下山ルートとして使う、黒沢山の北西尾根も確認。


谷を挟んだ対面には、4つのピークからなる秘峰「合地山」の山容。


K間さんは、藪山が楽しくて溜まらないって感じで、ずっとニコニコ顔。


そして「猛烈な激藪」と噂される、黒山の登りに突入。


その噂通り、背丈越えの激藪となった。登りなので結構きつい。
薄い踏み跡はあったが、だだっ広いピーク付近になると全く踏み跡が無くなり、一面猛烈な笹藪。

 
「ここが黒山のピークかな~」という少し開けた場所に出て一息ついた。
黒山に落ちていたゴミも回収。人の手が入らない清らかな山だからこそ、残置はしたくないもの。


進路を90°変えて南西方向に定め、激藪地帯を突破していくと、前方にいよいよ「黒沢山」。


ここもほとんど踏み跡らしい踏み跡はなく、背丈ある笹を無理やり突破していきました。
K間さんは、もうニコニコ顔(@^_^@)。


向かって左手には、深南部を代表する「不動岳~鎌薙ノ頭~丸盆~黑法師」の峰々。


黒山~黒沢山のコル付近まで来ると、笹の背丈も落ち着きました・・・と言っても腰高。


そして登り返し。前方にガレ場が見えてきて、その縁を歩いて行きます。


そのガレ場からの展望。正面にある白倉尾根の「白倉山」付近が、緑のじゅうたんで雰囲気が良さそうですね。
はるか向こうに見える御嶽山と中央アルプスは冬山の様相。下方は昨日歩いてきた「白倉林道」。


最後はなだらかな登りとなり、無事、黒沢山のピークに到着。
展望はないが、低い笹に覆われた明るい深南部特有のたたずまいでした。

 
山頂で30分ほど昼休憩した後は、進路を北西方向に定めて、北西尾根伝いに下山開始。
ここは南西方向にも支尾根があるので注意必要(最初間違えて、50m程登り返す羽目になりました)。
あとは、所々出てくるマーキングを頼りに、ひたすら支尾根を下って行く。


1,846mの小ピーク下で尾根筋が2つに分かれるが、「北回り」と呼ばれる北西方向の尾根に乗り、もう一つチェックポイントの尾根の分かれ目を左に行くと、ぺしゃんこ姿の廃小屋があった。

 
この廃小屋を通過して更に尾根筋を下っていくと、「黒沢林道」跡に降り立つことができました。地図を広げて「こうやって歩いてきて、今はこの辺りだよ」と説明するトコロ会長。


さて、ここからが核心でした。
林道は完全に崩壊して無くなっており、林道を歩くのは不可能・・・


更に急な尾根筋を降りて行きました。傾斜のきついところは、念のためロープを出して懸垂下降。
ここはガレて危険という情報があったので、ロープを持ってきて正解でした。
沢の高巻きを経験していても、やっぱりこういう急な下りはかなり緊張します。


慎重に下って行くと、やがて待望の沢床が!ガレて滑りやすい急な下りで、ちょっとドキドキでしたが・・・


そこは健脚の皆さんの力量もあり全員無事、沢床へ。「黒沢」という沢に思惑通り降り立ちました。水量は少なかったので渡渉も問題なし。

 
かつて、ここに架かっていたと思われる木橋は崩壊。昔は登山道だったことが伺えます。
どおりで最後の急な下りにも、何となく踏み跡が残されていた訳だ。


林道跡に上がると目の前に「黒沢橋」がすぐ現れました。ゴールはすぐそこ。
そして、この黒沢橋もちょっとドキドキものでした・・・

 
なるべくしっかりした橋板を選んで、忍び足で・・・ぎしっ(ビクッ)。


最後まで緊張の連続でしたが、無事全員下山。黒沢橋の左わきには「黒沢山登山道入口」の古い標識がありました。
黒沢林道の崩壊とともに今は廃道となっていますが、かつての登山道を歩くことができ、感無量。


西日を受けた紅葉が、本当に素晴らしかった。
ゆっくりと紅葉を堪能しつつ、30分ほど林道を歩いて「白倉権現ゲート」に戻り、私の企画した会山行は無事終了しました。

深南部の魅力って何でしょうね?
朽ちた立ち木と笹薮、人工物が一切ない、自然さながらのあの独特の雰囲気。人はいない小屋も無い、完全アウエーな山域・・・
地図の等高線をガン見し、コンパス&高度計と今見ている景色とを照らし合わせ、そして歩きやすいところをルーファイしながら突き進む、ワクワク・ドキドキ間を味わえる唯一の山域、それが深南部であり、魅力の一つだと私は思います。

皆さん、お疲れ様でした。                   byもりっしー