北アルプス・槍ヶ岳北鎌尾根その①

2009年5月1日~4日

半年ほど前から「GWに北鎌に行くから。」と会長に誘われ、どうしようかと悩んでいる内に月日は流れあっと言う間に目前に迫ってきてしまいました。
「北鎌尾根」・・・山登りをしている人なら一度は聞いた事がある名前だと思います。
加藤文太郎氏「単独行」、松濤明氏「風雪のビバーク」。
不世出の登山家と言われた加藤文太郎氏、そして当時先鋭的アルピニストとして名を広めていた松濤明氏。この二人の厳冬期の北鎌尾根による遭難が北鎌尾根の名を不動のものにしたと言っても良いかもしれません。
自分も山登りを始めた頃に松濤明氏「風雪のビバーク」を読み感激し、「いつかは北鎌へ・・・」が目標でした。
しかし、あまりにも有名になってしまった北鎌尾根は多くの人が登り、自分が求めていた山と嗜好がずれ、北鎌尾根は徐々に目標では無くなっていました。
なので、今回の山行も誘われはしたもののなかなか踏ん切りが付きませんでした。
しかし、自分が目標としているアルパインクライミングのルートの一つであり、 加藤文太郎氏、松濤明氏の両氏が歩いた尾根を自分も踏み跡を残してみたく、そして昨年志し半ばで逝ってしまった岳友のFさんが「いつか北鎌に行ってみたい・・・」と言う想いを引き継ぎ、行く事を決意しました。

上高地~北鎌沢出合



1日の夕方仕事を早めに切り上げ、沢渡に向けて出発します。
前泊用のテントを沢渡の駐車場に張り、軽くビールを飲んで就寝。
翌朝4時起床、5時半にはタクシーに乗り込み上高地を目指します。



お上りさんではあありませんが、自分にとっては北アルプスは初めて。
上高地も初めてで、人の多さと山小屋の綺麗さにただただ驚くばかりです。
芳野満彦氏が冬期にただ1人で小屋番をしていたという徳沢園に着いて、感動!
井上靖氏の「氷壁」もここで書かれたとの事です。



横尾までの林道からは前穂の北尾根が見えます。北アルプスの優雅な山容に圧倒されてしまいます。
何より梓川の水の美しさに感動!透き通る水に綺麗な沢床。北アの沢も遡行してみたい!



そして屏風岩。初登争いのドラマが繰り広げられた岩場を目の前にして、
あの岩に登りたいと闘志が湧いてきました。



沢山の登山客で溢れかえっていた横尾から分かれ、槍ヶ岳方面の登山道は静寂になり徐々に
残雪も現れ始めました。
槍沢ヒュッテ前で休憩しお昼にします。



上高地からの長い距離を黙々と歩きます。この平行移動が疲れる!
ステップを刻みながら、所々にある落とし穴に気を付け足を進めます。
大曲付近に到着し、目の前の東鎌尾根を見上げます。水俣乗越はどれだろう??
地図で確認すると目の前の急登ですが、あの急登を登るの!?は無理と判断し、
右側の最低鞍部「ニセ乗越」を目指します。



このニセ乗越にトレースがあるかと思ったら何にもありません。
仕方がないので若手の自分とTさんの二人でラッセルを交代しながら標高を上げていきます。
標高差500m!急登のラッセルはきつい!!
自分達が350mほどラッセルしたので、後続にいる相模R山の方々に交代してもらったら、
100mでギブアップ。仕方がないので最後はまた自分達がラッセルを行いました。



ようやく尾根に到着し、槍の穂先も頭を覗かせています。そして北鎌尾根も。



このニセ乗越からまた北鎌沢出合まで650mも下らなくてはなりません。
このルート、上高地からの最短ルートとは言え高低差がありすぎます。



天上沢から大槍と北鎌尾根。目の前には独標が聳え立ちます。独標の圧倒的な存在感!
明日はあれを登るのかと、背筋がゾクゾクしてきちゃいます。
この天上沢のどこかで加藤文太郎氏の遺体が見つかったとの事。
場所は分かりませんが冥福を祈り合掌。



ニセ乗越から1時間ちょっと歩いて北鎌沢右俣出合に到着。夏は分かりにくいようですが、
雪が付いていると雪の回廊ぽく見えて分かりやすいです。
残雪期は雪崩が少ない事からこの時期に北鎌沢から登る人が多いようです。



この日はここで幕営。北鎌沢に幕営したのは自分達5人と相模R山の4人、同じ労山系の浜松の
単独の方、3パーティーでした。
明日はいよいよ北鎌沢を詰め、北鎌尾根に飛び出します。
明日はどんな厳しさが待っているのだろうか、と不安になりながらも今日のラッセルの疲れで熟睡・・・

つづく・・・
投稿者・トシゾー