2025年 7月19日~21日
御嶽山の西面「サイノ河原」を源頭に持つ、濁河川支流「兵衛谷」。
この7月3連休は兵衛谷を遡行し、標高3000mある御嶽山を登り詰めるという壮大でタフな沢旅に、毎度のトシゾーさんと大阪在住のホリケンさん、そして私モリッシーの3人で行ってきました。
ちなみにトシゾーさん&ホリケンさんは「海外遡行同人」という沢仲間で、とにかく沢に関しては筋金入りのスペシャリスト。
日頃から運動不足がちな60手前の私が、3日間も二人について行くなんて「これって無謀かしら~?」と内心ビビりつつも、覚悟を決めてご一緒する事に。
1日目
朝5時に「濁河温泉」の御嶽山登山口前で、大阪からやってきたホリケンさんと合流し、下山先はこの濁河温泉の登山口になるので、トシゾーさんの車をデポして、ホリケンさんの車で入渓点となる「巌立公園」まで移動。
その巌立公園は柱状節理の景勝地。この岩壁の裏側が濁河川本流にあたり、二俣になっているところから入渓。
今週の前半は、かなり雨が降って増水の懸念はありましたが、意外にも思ったよりは渓相は穏やかで濁りも無し?これって、果たして平水なのかしら~?
で、出だしから早速ドップリ浸かって平泳ぎ。先に入渓していた某山岳会のパーティはロープを出すというので、先を譲っていただきました。思ったほど急流ではないので、泳ぎを混ぜながらジャブジャブと歩いて行けます。
淵は澄み切り、魚影も確認。ずっと浸かりっ放しだとウェットといえど、体がブルブル振るえます。ウェット着ていないお二人は、もっとブルブル??
で、最初の難関「2段3m滝」へ。ここは滝左の岩を各自フリーでよじ登って、ヘツリのトラバース。その3m下は激流!間違っても、ここは絶対に落ちられない!
一歩の踏み出しに勇気が要りますが、裏にあるガバに手が届けば無事突破!
しばらく続いたゴルジュも一旦終了し、穏やかな渓相になれば、吊り橋が目印となる二俣へ。
左俣が「濁河川本流」で、右俣がお目当ての「兵衛谷」・・・という事で、ここから右俣に入って、いよいよ長大な兵衛谷の遡行となります。
陽が高いというのもありますが、ここのゴルジュはとても明るく、キラキラしてメチャメチャ綺麗!
しばらく行くと、奥には落差20mあるという「曲滝」が!水量も多く登れる代物ではないので、ここは左岸側のルンゼを伝って高巻き。
「5mCS滝」は、滝右のスラブを直上。私は荷揚げしてもらって、ヌメヌメスラブを無事突破!
そして、またまた泳ぎのセクションへ!チンダル現象で、青く透き通った水が癒されるう~
ここも水流はそれ程強くないので、余裕の泳ぎ突破!
泳ぎの後は、ヘツリのセクション・・・楽しい!
ヘツリのセクションが終われば、またまた登れぬ?20m滝が!・・・また高巻きっすか~💦
滝の落ち口から先の沢床は、柱状節理の亀甲状となっており、まるで石畳が敷かれたよう。本当に美しい所です。
そこを過ぎれば、初日のゴール地点としていた取水堰堤に無事到着・・・しか~し!このハシゴ階段が、ザックを背負っていると登りにくいったら、ありゃしない!
堰堤を無事通過すれば、時刻もまだまだ14時になったばかりで時間もタップリあるので、予定よりも更に上流部へ。
堰堤から更に15分程歩いた先に、テンバ適地を発見!この先の上流部には、テンバに良さそうな所もない事から本日の寝床に決定。各自ツェルトを張って寝床確保した後は、やっぱり「お疲れ~」と、プシュ~して乾杯!
この日は朝早かったし、疲れもあって20時半には就寝zzz
2日目、朝4時過ぎに起床。
昨晩は疲れもあってシュラフに潜れば直ぐ爆睡し、概ねよく眠ることが出来ました。
ひどい筋肉痛も若干回復するも、2日目も長丁場、そして恐ろしい高巻き箇所も数回ある事から、やはり体力的には不安のある朝でした。
焚火の前で朝飯を食って、6時にはテンバを出発。穏やかな河原を過ぎれば、さっそくナメ滝の連続。
「2条3m滝」は、滝左を泳ぎながらのヘツリ。さっそく朝からどっぷり浸かるも、落ち口へ這い上がるのに一苦労で、私は2回も剥がれ落ちて流されました。
そこを過ぎると、20mあるという「吹上滝」が!名前の通り瀑風が吹上がり、水しぶきが凄まじい事!
吹上滝は左岸側を大高巻き。シダが生えたドロドロ斜面を四つん這いになって登って行き、薄い踏み跡をトラバース。
続いて出てくる2条20mの大滝も、左岸側を大高巻き。急斜面に生えた笹を数本掴んで登って行きますが、笹が折れたり抜けたら滑落ですし、ここは落ちられないキンチョーの連続。
そして、柱状節理のブリッジ下へ落ちる「龍門の滝」が現れました!これは凄い!!
こんな滝は見た事ありません。柱状節理の下部が浸食されて、上部が取り残されてブリッジ状になった様子。
その柱状節理のブリッジの上は、こうなってるのね~。蛇行した沢筋が、まさしく龍の通り道のようで、自然の造形はまた不思議。
「龍門の滝」を過ぎれば、お次は15m滝って、また高巻きっすか~?右岸側にあるチムニーを伝って高巻きするも・・・
これがボロ壁&浮石だらけで、メチャメチャ悪い!落ちたら沢床一直線なので、先にトップアウトしたトシゾーさんにロープで確保してもらって、無事突破。
苔苔スラブ状の釜を持つ滝は、水流際をトラバース。これが、やっぱり滑る滑る・・・
前を歩くお二人は、ブラッシングしながら通過してましたが・・・
ブラシを持ってこなかった私は、ズルズル&ドボ~ン💦
落ちたら足はつかないし、這い上がれませんし!しかも2回も落ちて、トシゾーさんからは大笑いされる始末。。。
そして、目の前には2つの滝「シン谷」と「尺ナンゾ谷」の二俣となる、シン谷出合に無事到着。
当初の計画ではココをテンバとする予定でしたが、時刻も12時半を過ぎたばかりで時間もタップリあるので、更に先へと進む事に。
進むべき「シン谷」は左俣。落差40mだという「パノラマ滝」を眺めている余裕もなく、またまた高巻きへ💦いや~落ちたらケガじゃ済まない、3mくらいのボロ壁がこれまた悪かった~!
「パノラマ滝」を無事巻けば、またまた、お次は落差50mあるというシン谷最大の「百間滝」が、これまた圧巻!
左岸側を立ち木を伝って這い上がるも、岩壁が出てきて右なのか?左なのか?なかなかルーファイが難しいところでしたが、なんとか広い尾根まで登って大高巻き。
「百間滝」を無事巻いて、更にはこの15m滝も、右岸側の草付きを高巻き・・・って、もう高巻きは勘弁してちょー💦
時刻も15時半ということで、滝上にテンバに適したところを見つけたので、本日の寝床に決定!
そして上流側には、いよいよ御嶽山の頂も、お目見え!
各自寝床を確保し、薪の準備も整えば、お待ちかねの「2日目お疲れ~」の乾杯!
標高もどうにか2100mくらいまで稼ぎ、沢の水もだいぶ冷たくなって、ビヤーもヒヤヒヤになり美味い事!
陽もすっかり傾くと、ガスが立ち込めて少し冷えてきたので、焚火にも点火。
今日は高巻きの連続で、私は屈伸もできないほど足がパンパンになりましたが、どうにかココまで無事来れたのも、お二人のおかげ。
夕暮れになると、ガスガスも消えて晴れやかになり、御嶽山のアーベンロートも。明日も天気が良さそうなので、朝から沢歩きが楽しめそう・・・?
お酒もチビリチビリと舐めていたつもりが、とうとう尽き、疲れもあって20時過ぎにはお開きにして寝床へ・・・
3日目、朝4時に起床。
標高2000m越ともなると夜は少し冷え込み、シュラフで寝るには快適の気温になって、朝までぐっすり眠ることができました。
毎朝トシゾーさんが一早く起きて、火起こしをしてくれたので、素早くお湯も湧いて助かりました。朝食&用足し&撤収を済ませ、5時半には出発。目指すは最終目標地点の「サイノ河原」。
しばらくゴロタを歩いていくと、さっそくゴルジュの連瀑帯へ。でもって、さっそく高巻きで、左岸側のブッシュを登って行きます。高巻きが終われば、更にはその上にも立派な滝が出てきて、またまた猛烈なブッシュを搔き分けての高巻き!
沢に降りれば、そこには御嶽山の頂が!長かった沢の旅も、ようやくゴールが見えてきたって感じですが、でも見えてからの詰めが、また長いんですよね~。
そして、またまたデカい30mの「神津滝」が!これは凄い!!
大滝を巻くと更に傾斜もきつくなり、巨大な火山岩がゴロゴロした瓦礫帯へ。このガレガレが浮石だらけで体幹使うし、岩を登ったり降りたりでメチャキツイ!
そして本日、3つ目のゴルジュへ。10mくらいの滝は階段状なので、簡単に登って行けました。もちろんノーロープ。高さはあるからスリップしないよう、スタンスの見極めは慎重に。
そこを越えると雰囲気もガラリと変わり、赤褐色の瓦礫帯へ。改めて、活火山の沢を詰めているんだな~と実感します。
そして逆光でちょっと見にくいですが、日本最高所の滝だと言われている最後の6m滝が!
そこは登らず滝左へ。でもって、最後の滝を越えて更に詰めていくと・・・
ガレガレだった風景が一変!視界は一気に開け、目の前には青空と光に照らされた、鮮やかな草原の緑一色に!!そのコントラストに思わず息をのみ、この景色を見て一言「来て良かった~」と、私はつぶやきました。
兵衛谷の源頭、最終の目標地点「サイノ河原」に無事到着。
もうそこは一面、お花畑の楽園。「ミヤマダイコンソウ」は至るところに・・・
そして、定番のハクサンイチゲも。
で、全員揃ったところで、記念の1枚。2日前は、はるか遠くに思えた「サイノ河原」も、お二人に引っ張っていただいたおかげで、この地へ立つことができました!
折角ココまで来たので、ついでに御嶽山の山頂まで行ってみる事に。
正面の泥池が「二ノ池」で、その左奥に見えるのが山頂。この二ノ池は火山灰の堆積が進み、昨年10月に干上がり、池が消滅してしまったのだとか?
山頂下まで歩いてくれば、そこには丈夫そうなシェルターが設置されておりました。慰霊碑の前で15秒ほど手を合わせ、これまたキツイ最後の階段を登れば・・・
無事山頂へ!御嶽山を登ったのは初めてかも?
背後に見える火口が「一ノ池」。2014年に噴火したのはこの火口ではなく、山頂西側にある「地獄谷火口」からとの事で、現在も立入り禁止区域に指定されております。
今から11年前、2014年9月27日の昼頃に起きた日本最悪の火山災害は、山ヤにとっては本当にショッキングな出来事でした。
楽しいはずの登山が大惨事に。58名の方がお亡くなり、発生後10年以上を経ても、なお5名の方が行方不明との事・・・心よりご冥福をお祈りいたします。
登山道から見た「サイノ河原」。一般的に「賽の河原」と呼ばれる場所は、荒涼とした風景や石が積まれた様子から名付けられることが多いそうですが、ここにはそんな雰囲気はまるでなく、一歩足を踏み入れば、まるで天国のような別世界が広がっておりました。
摩利支天山側への登り返しが、これまたきつくてヘーコラしましたが、分岐を越えれば「三ノ池」。
その周辺には「コマクサ」の群生が!もう枯れ始めで終盤かな~?
速攻で濁河温泉へと下山して行くトシゾーさんとホリケンさんに付いて行こう!な~んて思う気持ちはさらさら無く、それなりのペースで下る事、2時間弱・・・
目標の13時前には、車をデポした濁河温泉の登山口に無事下山・・・疲れた~
私より30分も早く下山し、すでに着替えも済ませていたトシゾーさんからは「臭っ!」と言われてしまいましたが、確かに沢から戻ってくると、自分でも焚火の煙と汗と泥が入り混じった、何とも言えない悪臭を感じるのであります・・・
私は着替える間もなく悪臭を放ったまま、市営の濁河温泉へ直行。露天風呂だとは聞いていましたが、洗い場まで露天でビックリ!アブが飛び交っていたのは玉にキズでしたが、湯加減も良くて気持ちのいい温泉でした。
兵衛谷は、長大で深い谷を持つ名渓で、体力勝負の沢だと改めて感じました。
トシゾーさんとホリケンさんに随分と助けてもらった沢旅でしたが、何とかオヤジの体も奮闘し、怪我も無く事故も無く行けたのが何よりです。年々体力の衰えを感じる今日この頃ですが、またスケールの大きい沢へチャレンジしたいですね! by モリッシー