阿弥陀岳、北西稜

八ヶ岳の冬季アルパインやアイスも、そろそろ終盤の3月後半。
お彼岸の3連休は、1泊2日でリュウと阿弥陀の北西稜へ行ってきた。

北西稜は、冬の八ヶ岳の中でも難易度が高いとされ、尾根に取り付くまでは、ルーファイとラッセルを覚悟しなくてはならないルートだ。連休とはいえ「トレースは無いと思ったほうが良いよー」と聞いていたので、初日は北西稜の取付きまでの偵察&トレース作りに当て、2日目は本チャンアタックという作戦を立てたが・・・

さて、どうなることでしょう?

まず、初日は北西稜へ取り付くまでの偵察とトレース作り。
 

 

 

摩利支天大滝へ通じるルンゼから入って滝の左(右岸)を高巻き、リュウと交代交代で更に登って行きました。
 

 

 

時々、腰上までズボリと行くが、ひどいラッセルという訳でもない。
 

 

 

樹林帯を突破すると、ようやくダケカンバの生えた草付き岩稜地帯へ。探索を始めてから、ここまで約2時間ほど。更にこの上がどうなっているか?確認してみると、稜線まで何とか行けそうなので、探索はここまでとした。

 

迷いはしながらも、おおよその地理も把握できたので、明日は大丈夫でしょう!?
テン場に戻ってくると時間はもう既に15時。
アイスをやりに行く時間も気力も無くなってしまったので、もうここでやることと言ったら、やっぱり飲むことでしょう!
 

 

 

ザイルパートナーであるリュウと、明日の無事完登を祈って、ビールで乾杯!焼酎にワインも空け、なんだかんだ21時近くまで飲み続けてしまいました・・・
ぐでぐでになって、いつの間にやらフェードアウトzzzz。
2日目・・・
朝4時半に起床。頭はさえない(いつもの事か・・・)が、体調は良い。

 

朝飯&支度を済ませて、すっかり明るくなった6時にBCを出発。
予定通り、摩利支天大滝のルンゼから入り、阿弥陀の北西稜を目指しました・・・

 

が、前方に自分達より一足先に大滝を目指す先行パーティーがいて、なんと、昨日自分たちがラッセルして付けたトレースを、登って行くではないか~???
どうやら、先行パーティーも北西稜狙いのようだ。
「通行料取らないとな~」とリュウとしゃべりつつ、我々もその後に続く。
 

 

トレースのおかげで、テン場からわずか1時間で樹林帯を抜けた。

しかし、ガスガス&風びゅんびゅんで阿弥陀の姿は見えず・・・

冷たい北西風をもろに受けながら更に雪稜を登って行くと、
左右ともスパッと切れ落ちた北西稜のリッジが遂に姿を現した。

 

先行パーティーは、このリッジからロープ出してコンテで行ったようだが、我々はまだロープは出さず、そのまま第1岩壁の基部まで進んだ。
先行パーティーがその第1岩壁に取り付いている間に、ゆっくり登攀準備をしていると・・・
 

 

 

ラッ
キーにもガスが切れ始め、待望の日差しが!
 

 

そして、上空は青空に\(^o^)/。日差しを受けた阿弥陀の姿がなんと美しいこと!
いつも忘れ物が多い私なんですが、今日はリュウがATCを忘れてきてしまったとの事・・・おいおい。
「終了点に着いたら半マストでビレイお願いします。」とリュウが私に忠告し、第1岩壁の基部からの1P目、私リードでクライムオン。
まずは壁右側のバンドをトラバース、するといきなり足場が崩れて3m程滑落・・・ははは、怖え~(-_-;)
草付き交じりのルンゼを、クォークのピックを効かせながら直上し、1P目の終了点へ。

第2岩壁の核心をリュウがやりたいという事なので、第2岩壁基部までの2P目も私リード。

第2岩壁基部の終了点から、登ってきた北西稜のリッジを眺める。
いや~ゾクッとするこの高度感、自分は今とんでもない所にいるって事を改めて実感。

 

 

 

第2岩壁の右壁を見れば、リュウが今回やりたいと言っていたクラックの様相が・・・
「いや~ぶっ立ってるし~、これ本当に登れるのオ~??」
 



核心の3P目を前に、余裕顔?のリュウをパチリ。
その核心の3P目、リュウがリードで登り始めた・・・

が、事もあろうにロープがキンクして、立ち往生するトラブル発生!
集中していたリュウには申し訳なかったが、一旦セルフビレイしてもらって、絡まったロープをほぐす。
「リュウがATCを忘れたばっかりに(半マストでビレイしたから)ロープがキンクしたんだー」と言い訳したかったが、ビレイヤーは私だから「ゴメ~ン」と謝る。

 

 

 

その核心のクラックは、想像以上にきつかったー(写真はフォローで登る、わたくし)。
リュウにどうやって登ったのか?を聞いたら、静岡労山お得意の「A0」だとの事。有効なホールドは見つからないし、仕方なくクラックにジャミングするも、グローブがズルズルと脱げてくる始末。そして、腕は既にパンパン・・・リュウにじりじりと引っ張り上げてもらって、何とかこの核心を越えました。
足はアイゼン&手はグローブつけたままフリーで登ろうなんて、とてもじゃないが今の私じゃ、ココは行ける気がしない。

ゼーゼーハーハー、核心の終了点に到着したのは束の間、次の4P目は私リード。

 

 

 

向かって左手、お隣の「北陵」には大勢のクライマーの姿が。
 

 

 

5P目はリュウがリード。ちょっといやらしいリッジ越えると、摩利支天と阿弥陀のピークがようやく見えてきた。

 

 

最後の6P目私リード。無事、摩利支天のピークに出て完登!

登攀中は、ずっと冷たい北西風に当たっていたが、稜線上はもうポカポカ陽気。日差しはもう春ですね~。

昼休憩の後、ロープと登攀具を片づけて、阿弥陀のピークへ。

そして山頂。お決まりの「ハイ・チーズ」。
やっぱりピークで終わるのって、気持ちが良いですね。

 

下山ルートは、一般道の中岳沢経由で。
雪崩が心配される中岳沢ですが、雪は少な目なので全く問題なし。

 

 

尻セードで中岳沢を滑り降り、山頂からわずか30分で行者小屋に到着。さすが3連休、行者小屋のテン場は夏山並みの混雑ぶりでした。
 

 

ここは本当にロケーションの良い山小屋です。

 

改めて、あんな危ないところによく登ったものだと、阿弥陀の北西稜を眺めつつBCに戻り、17時前には無事、美濃戸口まで下山しました。

今冬の八ヶ岳は、アイスにバリエーションルートと、これまでに無く楽しめたシーズンだったと思います。北西稜をやってしまうと、次の目標をどうしようか?悩んでしまいますが、これからの残雪期のシーズンは、更なるスケールの大きい山へ是非行ってみたいですね?

 

                      by もりっしー