今年は7月が東京オリンピック開幕に合わせて4連休になるという事で、若手の皆さんを誘って「剱岳・チンネ」に行ってきました。
チンネの取付きとなる「三ノ窓」までのアプローチは「室堂」経由が一般的ですが、6年前にも行った「池ノ谷」経由の方が断然、早い!安い!という事がわかり、今回も「池ノ谷」経由で行くことに。
最大の懸念事項は、池ノ谷の雪渓が崩壊せず繋がっているかどうか?ではありますが・・・
<7/22>
朝8時に静岡を出発し、長野道の松本ICを降りて上高地方面へ。
初日は静岡から富山にある「番場島」までの車移動だけなので、ゆっくりと下道を使って交通費を安く済ませました。
途中、ドライブインや富山市内のスーパーなどにも寄ったりして、約9時間のロングドライブでしたが、番場島には17時前に到着。
静岡も暑いですが、富山もやっぱり暑いな~💦
この日は、野営場にテントを張って前泊。明日は標高差で1800mくらい登るので、お酒も程々に?ほろ酔いになって、20時過ぎには就寝。
<7/23>
翌朝、4時に起床。朝食&用足しも済ませて、5時に番場島の野営場を出発。
林道をぼちぼち歩いて行くと、「小窓尾根(左)」と「剱尾根(右)」の稜線を見ることができました。コルのように落ち込んでいるところが、これから目指す「三ノ窓」。
う~む、道のりは遠い・・・
林道を30分程歩いていくと、まもなくして白萩川の取水口堰堤へ。
沢沿いの渡渉ルートにしようか?迷いましたが、今回も右岸側を高巻きして「小窓尾根」の取付きとなる二俣まで行くことに。
このルートは要所にFIXロープもあって、かなり整備されているので助かります。
「小窓尾根」へ向かう渡渉点は、対岸に大岩がある所を渡りましたが、実は少し上流部に行けば倒木の橋?が架かっており、そこが現時点の渡渉ポイントだと後で知りました。
水はめちゃめちゃ冷たく、クールダウンできたから良かったかな?
ブッシュを掻き分けつつ踏み跡を辿って行くと、やがて「池ノ谷」の石碑が現れ、鬼のような急登に突入!
先頭を歩くウスヤンが、標高1600m付近にある小窓尾根の峠まで、全く休憩取らずにノンストップで登っていくものだから、オッサンはもうヘロヘロに・・・。
なんとかかんとか、汗だくになりつつ小窓尾根の峠に辿り着くと、いよいよ「池ノ谷」の雪渓がお出まし。
少し藪っぽい草付きの踏み跡を辿って行けば、無事雪渓に取り付く事ができました。
既に日射しがきつく暑い暑い!それでも、時々冷風が吹いてくるのが幸いでした。
雪渓をノーアイゼンで登って行くと、それとわかる「二俣」へ。
6年前は、この雪渓の上にテントを張ってビバークポイントとし、チンネを目指しましたが、時刻はまだまだ11時。雨雲レーダーを見る限りは、天気の崩れも無いということで、予定通り左俣に入って「三ノ窓」の稜線を目指します。
その左俣を詰めて行くと、やはりシュルントが口を開けていました。「ヒェー」と奇声を上げながら、シュルントを跨ぐコージン。
あと50cm大きく開いていたら、「ファイト~一発」のジャンプ越えになったかもしれませんが、運良くも一番閉じている箇所は、大股で跨げる程度だったので、難なく?通過する事ができました。
その先も、特に危険なところは現れず、雪渓も安定していて助かりました・・・
とは言ってもココは落石の巣。周りは常に、落石のカラコロ音がこだましていました。
残雪期の場合は、上から雪庇が落ちてきて、きっと生きた心地のしない通過になるのでしょう。
更に詰めて行くと、やがて雪渓の終点も見えてきて、その奥には「三ノ窓」の稜線を確認する事ができました。でも見えてからが、なかなか長いんですよね~。
長かった雪渓もようやく終わりを告げ、「池ノ谷ガリー」の出合となるガレガレ箇所に突入!
ここは、急斜面な上に巨石の浮石だらけで、本当に生きた心地がしません。
でも、そのガレ場を慎重に突破すれば、無事「三ノ窓」の稜線へ!
番場島から約9時間で到着することができました。ヤレヤレ。。。
稜線に出てみれば、もうこの景色!
久しぶりに見る左奥の「チンネ左稜線」には、数パーティーがアリの行列のように取り付いていました。青空の下、いや~今日は気持よさそう!
「三ノ窓」に到着したら、先ずは寝床の確保ですね。
流石4連休、稜線上には既に5張程あってスペースが無いので、稜線から少し降りた平らな場所に、2張分の寝床を確保しました。
右側にある「池ノ谷ガリー」からの落石も、ここだったら直撃を受ける心配は無し?
テントの前は、この絶景。
改めて、よくぞこんな恐ろしい所を登ってきたものだと、我ながら感心してしまいます。
帰りは、ここを降りていかなくてはなりませんが・・・
雪渓でキンキンに冷やしたビールを取り出せば、呑兵衛はお待ちかねの時間!
「三ノ窓」まで順調に来れた事と、明日のチンネ左稜線が青空の下で登れる事を祈りつつ、みんなで乾杯しました!って、いつも呑んだくれてばかり・・・
富山湾に沈む夕日を眺めつつ、ヤローどもはしばし、うっとり?まったり?
後ろにそびえたつ、チンネのアーベンロートも拝むことができました。
明日は、いよいよ待ちに待った「チンネ左稜線」の登攀!
予想以上に「三ノ窓」にはクライマーが多く、ちょっと渋滞が心配なので、何とか朝一番に取り付きたいところではありますが・・・さて、どうなる事やら?
<7/24>
朝3時半に起床。
標高2600mある筈の「三ノ窓」なのに昨晩はちょっと蒸し暑く、ぺらぺらシュラフでも暑いくらいでした。
朝食を済ませて登攀準備し、4時半には稜線へと出発。
途中、雪渓から湧き出る水場に寄って水を確保すると、対面の稜線からご来光が・・・
いや~今日も、すこぶる良い天気だ事!
三ノ窓雪渓をトラバースして、「逆4の字」が目印となる基部へと向かうも・・・
ナント!そこには先行パーティーが・・・
その先行パーティーによると、更に2パーティーが既に左稜線へ取り付いているのだとか・・・??
朝5時に基部へ到着した時点で、結局、我々パーティーは4番手である事が分かりました・・・
しくじった~
逆4の字の基部から見た「三ノ窓雪渓」と「小窓の王」。アイゼン&ピッケル必須ですよ~!
基部で1時間以上も待って、ようやく我々もクライムオン!
先行はウスヤン&ツッキー組、その1ピッチ目のリードはウスヤン。
さすが13クライマー、クラックも全くプロテクション取らずにグイグイ登って行きました。
私のパートナーはコージン。奇数ピッチはコージンがリードし、偶数ピッチは私リードの”つるべ”で行きました。
プロテクションは残置のハーケンだけだとランナウトするので、カムは1セット(#03~#2)あると安心ですね。
3ピッチ目のフェイスを登れば、いよいよ、鋭くとがったチンネの壁がお出まし!このスケールは、なかなかなものです。
しかし、ここから大渋滞に・・・結局、下のハイマツのリッジ上で30分待ち・・・
いやはや、先が思いやられる~
5、6ピッチ目は、40mくらい伸ばして、ランナウトよろしく、グイグイ登って行きました。
リッジに出ると、いよいよ核心の「チンネの鼻」が目の前に。この角度から見る鋭く尖ったチンネが、何とも素晴らしく映える事!
左にあるトンガリ針峰は「クレオパトラニードル」。
「三ノ窓」から突き上がる「小窓ノ王」が何とも威圧的!
いよいよクライマックス、Ⅴ級の「チンネの鼻」に突入。終了点まで約40mくらいあるので、登りごたえのあるピッチです。
コージンも落ち着いてリードで登って無事突破!
眼下は「三ノ窓雪渓」。いや~なかなかの高度感!
カンテの下は、スパッと数百m切れ落ちているので、グレードよりも高度感による恐怖心のほうでビビるのかも?
左手に見えるは「クレオパトラニードル」の頭。その奥が、八ツ峰の「Ⅵ峰(左)」と「Ⅶ峰(右)」かな?
八ツ峰もまた、大勢のパーティーが取り付いていました。流石4連休!
9ピッチ目からは、高度感のあるリッジへ。
そして最終ピッチは「チンネの頭」へ。最後の頭は・・・
「そこに立ち上がって、Finishだよ~」と、コージンに催促し・・・
雄たけび上げて?見事、お立ち台に立ってくれました!
でも、岩に跨って恐々しているコージンの方が、コージンらしいよ~?
渋滞にハマって休み休みでしたが、お昼の12時過ぎには全員トップアウトし、お約束の「ハイチーズ!」
昼になって雲も立ち込めてきましたが、天気も崩れることなく、無事、左稜線を完登し感無量。
更に本峰まで行ってみたいという気持ちもありましたが、一先ず目標も達成できた事だし、みんなの意見を踏まえ、テント場へ戻る事に。
でも、三ノ窓への帰路も侮ってはいけません!最難の「池ノ谷ガリー」の下降が待っています。
ここも、先行者が「池ノ谷ガリー」を下降して、安全な場所まで着くまで随分と待たされました。
1m幅しかない乗越から「池ノ谷ガリー」への下降は、右岸側を2ピッチ懸垂下降。
ロープが岩に引っ掛かり回収不能になるのを恐れましたが、何とか回収できて安堵。
こういうガレの歩きは沢登りでだいぶ慣れましたが、やっぱり悪いものは悪い!
14時半頃にはビバーク地へ。さて、無事戻れば・・・
やっぱり、天然冷蔵庫(雪渓)でキンキンに冷えたビヤーで、皆さんと祝杯!最初の一口をゴクリとやれば・・・「あ~~~」って、もう極楽気分に!
ツッキー&コージンも素晴らしいロケーションの中、初めてのチンネ左稜線を登って充実感に満ちていました。そりゃそうだ!
そしてまた、富山湾に陽が沈む・・・
明日は、この深くえぐられた「池ノ谷」を下って、下山の予定。
何とかお昼までには「番場島」へ着きたいところですが、この直ぐ下のガレガレ通過が核心か?
・・・などと考えつつ、ほろ酔いオヤジは20時には就寝。
<7/25>
朝4時に起床。
夜中に少し雨がぱらついた影響か?前日の朝よりも少し冷え込みましたが、かえって寒いくらいが私には丁度良く、熟睡する事ができました。
最終日の4日目は、三ノ窓から「池ノ谷雪渓」を下降して、番場島まで下山します。
朝食済ませてテント撤収し、この素晴らしいロケーションともお別れ。
そして4日目も、朝からよく晴れて山日和に!
剱の3日間、まったく雨にも見舞われず、晴れの天気が続いたことは本当に奇跡的です。
標高差1800mある番場島へ向けて、5時過ぎに出発。
で、いきなり核心のガレ場の下降が待ち受けています。ここは本当に「ラ~~ク」の連続。
一歩踏む度に落石を起こすので、4人同時に動かないよう、ポイントポイントで1人づつ降りて行きます。草付きに出れば多少楽になるも、足元は急斜面のザレザレなので、最後まで慎重に。
無事ガレガレが終われば、雪渓歩き。
もちろん、落ちたら止まりそうにないので、アイゼン&ピッケルは必須。
「池ノ谷雪渓」は北西向きなので、ずっと日影。
だから雪もなかなか溶けず、夏でも分厚い雪渓が残り易いのでしょう。
そして、再びシュルントを越えて・・・
二俣まで降りて来れば、安心&安全。「三ノ窓」から2時間弱で降りてきました。
更に二俣から雪渓の末端まで下って、ここでアイゼンもお役目終了。
岩の隙間からは、可愛らしいオコジョも。
雪渓が終われば、地獄の「小窓尾根」への登り返し・・・
元気な若手の皆さんに対し、オッサンは暑さに参ってヘロヘロでしたが、11時過ぎには番場島へ到着し、3日間の山行が終了しました。
今回、2度目の剱岳チンネでしたが、剱はやっぱり何度来ても素晴らしいところですね!
初めて訪れた若手の皆さんも、良き経験になった事でしょう。
そう言う私も、まだまだ知らない未知の山へ行きたい所ばかり・・・
あまり無茶できない年頃になりつつはありますが、まだまだ!オッサンの体力が続く限り、チャレンジしていきたいですね!
by モリッシー