大唐松尾根~農鳥岳&白峰南嶺

南アルプス農鳥岳の東に派生する「大唐松尾根」。
8月13~15日は、この藪尾根から農鳥岳、ついでに白峰南嶺を合わせて縦走してきました。


奈良田ダムの吊橋前の駐車スペースに車を停めて、5時半頃出発。
やや雲があるものの、まずまずの天気。

しかしこの日は、九州南部にある台風の影響で、湿った空気が入って天気が変わりやすく、
「山間部は雷雨があり、激しく降る」という予報・・・う~ん、雨はともかく雷が心配。

それと、もう一つの懸念は3日間、”水場が無い”ということ。小屋も無けりゃ、沢も無い・・・
ということで、今回は500mlのペットボトルを14本+焼酎500mlを担いで行きました。

そこそこの重量ですが、今回は登攀具やロープがないから、まだマシかな?

 
取付き場所は、広河内林道のゲートにある「山の神」という石祠の直ぐ左から。


鉄パイプの整備された巡視路をジグザグ行くと、やがて奈良田第一発電所へと降り立つ導水管が。
発電所の施設が終わった後は、高圧線鉄塔の巡視路。
階段にはなっているものの、電柱が倒れていて、送電線をいちいち跨いで通過しなければならないし、
傾斜もきつく、落ちたら谷へ一直線!・・・のようなところでした。


踏み跡がはっきりした尾根道を登って行くと、最初のピーク「雨池山(1936m)」に到着。
ゲートから約3時間、展望は無し。


雨池山のピークを越えたところから、地図とコンパスを見定め、進路をやや北向きに変えます。
コルからの登り返しは低い笹に包まれて、踏み跡は一気に薄くなる。1つめのチェックポイント。

唐松の生えた登り一辺倒の尾根で、左側に高くそびえる大唐松山が、林の隙間から見えてくる。
改めて「先は、まだまだ長げ~な~」と実感。


2320m峰~2346m峰のピークを過ぎたところから、進路を西向きに変えます。
尾根がはっきりしているので迷わないが、2つめのチェックポイント。


そして、いよいよというか、ようやく「大唐松山」の頂が前方に。
標高2561mあるその頂も、いつしかガスに覆われてしまいました。


鞍部からの登りが、また細尾根の急登!!立ち木や、岩を伝って慎重に登って行きますが、
しかし寄りによって、危険なこの痩せ尾根を越えているところで・・・まさかの!?

ピカッ☆・・・

ゴロゴロゴロドド~~~~~~~ン

ひいい、マジかよ~~~~


突如の雷雨に・・・そりゃないぜ!
急いで、ザックから合羽を取り出して、いくらか雨を凌げる木の根元に身を潜め、雷が去るのを待ちました。


1時間くらい?して、ようやく雷の轟も遠くへ去り、雨も止んだ。
また、いつ雷雨があるかわからないので、先ずはこの急登を登って「大唐松山」の山頂へと先を急ぎました。

 
雨で滑りやすくなった急登というか、岩場の登りは、かなり危険な状態でしたが、無事ピークへ。
古い標札と三角点がありました。


ここは見通しが良いピークで、それこそ雷様に見つかり、落雷の標的にされては溜まったものではないので、
足早に立ち去り、さらに西へ進んでいくと・・・


穏斜面ですが、一張り行けそうなスペースを発見。
時間はまだ14時前でしたが、雨が止んでいるうちに、ここで幕営することに。

案の定、夕方からまた雨が降り出し、夜も降ったり止んだり。
焼酎呑んで、強制シャットダウンを試んだが、標高がある割には気温も高く、ムシムシして、なかなか寝付けない夜でありました。
果たして、明日朝は雨が止んでくれるのだろうか・・・?

翌朝(2日目)・・・

未明までパラパラ降っていた雨は止み、林の隙間からは待望のご来光!!
軽く朝食を済ませ、テント撤収し、5時半出発。
樹林帯を抜け、さらに西へ進んでいくと・・・やがて、視界が開け


このロケーション!前方に、これから目指す農鳥岳の姿が・・・って、まだまだ遠いなあ~・・・


間ノ岳、そして北岳の白峰御三家も、今日(今)はバッチグー。


南に富士山、良く晴れて天気よし!(今は)


でもって、ここからイヤになるほどの藪漕ぎが始まる。まあ覚悟の上。
樹木は全て水滴で濡れてるので、全身もうびしょ濡れ。


尾根沿いは、ダケカンバにシラビソの若木、シャクナゲが覆い尽くしており、
それを避けて、北斜面側を薄い踏み跡を辿ってトラバースしていきます。


それにしても、時刻はまだ朝8時だというのに、早くも白峰三山の3k級はガスがかかり始めていた・・・
晴れていたのは早朝の一瞬だけ、気温が上がると直ぐガスってしまいます。


だらだらと長かった2500m代のアップダウン&トラバースは、ようやく終わりを告げ、
いよいよ農鳥岳本峰の登りへ。


その登りは、ダケカンバの生えた草つき。標高を上げるにつれ、だんだん斜面がきつくなってきます。
草付きを登り切ると、いよいよ背丈以上のハイマツ帯へ突入。


ハイマツの枝は幾分刈り払われていて、踏み跡がありました。
その踏み跡を、誘われるように突き進んでいくと、左が落ち込んだガレ場に出た。
左に見えるピークは、広河内岳かな?


そこから上は完全に踏み跡も消え、ハイマツの大海原、しかも急登。先が思いやられる~。


背丈あるハイマツ帯を避けて、ガレの縁を登って行くと、やがて岩壁にぶちあたり、途方に暮れる。
落ちたらケガじゃ済みませんが、意を決して、ハイマツの枝に掴まって岩場を登って行きました。お~こわ。

ガレガレの天辺に何とかよじ登れば、少し安堵。バックに、歩いてきた大唐松尾根。大きなピークが「大唐松山」。


背丈以上のハイマツ漕ぎは終わったが、腰高のやつがまだまだ続く。もうウンザリ・・・


まだまだ終わりの見えぬハイマツ帯。山頂は既にガスが立ち込めていました。


やがて、ハイマツも膝高となり、ようやく歩きやすくなった。


そして、いよいよ稜線も近し!大唐松山を出発して5時間で、登山道に合流。


ザックをデポし、空身で農鳥のピークへ。ここからはもう、ハイウェイに乗った気分でした。

ところが、そのピークへと向かう途中、またしても雨が降り始め・・・
合羽も着てこなかったので、ずぶ濡れになってしまいました。


11時前に、雨降る農鳥岳山頂へ無事到着。正面の山は、西農鳥岳。


そして、これから向かう先は「白峰南嶺」。その向かう方向には、ニョキニョキと積乱雲?

念願だった「大唐松尾根」も無事、農鳥まで走破できた事だし、
この後は「白峰南嶺」の稜線を縦走して、笹山から奈良田へ向かって下山する予定が、あいにくの雨降りじゃ~・・・

温泉入って三ツ矢サイダー、それにカツ丼食いてえ~と、欲望に駆られつつ・・・


この下降点から、「いっそ下山しちゃおうか~?」とも考えたが、気を持ち直して、
やっぱり予定通り、白峰南嶺へ行くことに。

稜線上で一番怖いのは雷ですが、今のところ雷の轟も無し??
ザックの中には翌日分までの水や食料、それにお酒も十分あるし、それを持ち帰る訳にもいかない。


下降点から登り返して、白峰南嶺の最初のピーク「広河内岳」へと向かいます。


広河内岳は、3年前に東俣林道を経て「池ノ沢」を遡行し、このピークへ至った思い出深いところ。
前回は、素晴らしい天気に恵まれたが、今回はガスガス。


この谷筋が「池ノ沢」。この谷筋を40分あまり下って行くと、神秘的な池「池ノ沢池」があります。


何とかキキョウ?


え~と・・・なんて名前?


振り向いて左のピークが広河内岳。一瞬ガスが切れて、農鳥岳も姿を現しました。


お次のピークは「大籠岳」。


その「大籠岳」の山頂。ちょっと見にくいが、標識には「2767m」と書いてある。


歩き易いなだらかな稜線が続きます。随所に目印があるので、迷いも無し。


時刻は14時、もともと笹山北峰まで行く予定でしたが、ようやく雨も止み、
先を急ぐ必要もないので、2776m峰の南側付近にテントを張って、この日は終了。


雨は止んだが、対面にあるであろう「仙塩尾根」の方角からは、また雷の轟が・・・
夕方になってまた雨がぱらつき、とにかく雷が怖かったのですが、幸いにもその後は、天気が回復。

翌朝(3日目)・・・


素晴らしい天気となりました。


前日は、ガスって見えなかった「塩見岳」と「仙塩尾根」の稜線。右下は、我が家。


塩見のモルゲンロート、いいねえ~。


こちらは大籠岳~広河内の白峰南嶺と農鳥方面、北岳も良く見えました。

3日目の最終日は、この白峰南嶺を笹山まで縦走し、そこから車を停めた奈良田へと下山する予定。
特に難しいところも無ければ、急ぐ必要もないので、既にのんびりムード。

テント撤収後、5時半頃出発。


稜線歩きって、日が登った直後の、まさにこの瞬間が一番綺麗ですよね~。
なだらかな前方のピークは、これから向かう「白河内岳」。


その「白河内岳」の山頂、標高は2813m。360度遮るものがない、見晴らしの良い山です。


西に、塩見岳と蝙蝠岳。


その蝙蝠岳のさらに向こうは、千枚岳に悪沢岳。


白河内岳の南部、お次は最後のピーク「笹山(黒河内岳)」へと続きます。

白河内岳~笹山間は、ハイマツ帯から樹林帯となり、唯一迷いやすいところ(目印はたくさんありますが)。
それに、ガレ場は浮石が沢山あるので、ちょっと注意が必要。


単調な樹林帯を抜けると、笹山の北峰に到着。
山頂にいらした方から、塩見をバックに写真を撮っていただきました。


笹山北峰から見た、白河内岳方向。北アルプスでいうと「蝶ヶ岳」の稜線とちょっと雰囲気が似ているかな?


展望の無い笹山南峰から、奈良田へ向けて下山開始。


笹山南峰の標高は2717m、奈良田の標高は約800mなので、標高差約1900mの長〜い下り。
ここは、通称「笹山ダイレクト尾根ルート」と呼ばれる準登山道ですが、よく整備されています。
日帰りで登られる方も結構多かった。


笹山南峰から2時間半で、奈良田ダムの吊橋へ。9時半に無事下山。
稜線を見上げれば、既にガスガス・・・ホント、夏の南アルプスは、1日晴れた試しがないですね。

帰りは欲望通り、奈良田の温泉に入って、三ツ矢サイダーでカラッからの喉を潤し、
途中、定食屋でカツ丼食って、静岡へと帰りました。雷は怖かったですが、良い山行でした。

大勢で行く山行も良いですが、たまには、誰も入らない藪山を、一人ルーファイしながら登るのも良いものです。

by もりっしー