7月の月末クライミングは八ヶ岳大同心雲稜ルートに行きました。アルパインクライミングの入門ルートです。
1日目は赤岳鉱泉までの移動のみ。先発組のモリッシーさん、タッサン、アリスさん、ユータさんと私(Iku)の5人で出発しました。昼過ぎに赤岳鉱泉に到着。午後からは雨予報のため周辺の散策をすることもできず、屋根の下のテーブルを陣取り食べたり飲んだりしていました。15時頃にトシゾーさん、Qさんが到着。直後に雨が降り出しました。雨脚はだんだんと強くなりましたが、日が暮れる直前には止みきれいな夕焼けが見られました。各自持参したお気に入りの山ごはんを食べ、お酒も適度に入り談笑。夜の8時半にはそれぞれのテントに収まりました。
(雨が上りの奇麗な夕焼け、岩は乾くのでしょうか・・・)
翌朝3時、テント場に明かりがともり始めます。稜線でご来光を見る登山者が続々と出発していきました。私達も支度をして予定していた5時少し前に出発。テント場から数分歩いたところで一般登山道を外れ大同心沢に入ります。大同心基部までの尾根はかなりの急登。昨日の雨で滑りやすい斜面を一歩一歩登っていきます。
森林限界が過ぎたころ、目の前に大同心が見えました。さらに近づくと先に出発していたトシゾーさんが1ピッチ目の終了点に着くところでした。他に雲稜ルートに取りつこうとしているパーティーの姿はなく私達が2番手の模様。手早く支度をして取りつきに向かいました。
(1ピッチ目を登るトシゾーさん(上)ビレイをするQさん(下))
(雲稜ルート取りつきで登攀の準備をするモリッシーさん、アリスさん)
今回は3パーティー。先行を行くトシゾーさん&Qさん、次にアリスさん&私、そして、モリッシーさん&タッサン&ユータさんです。
1ピッチ目、アリスさんリードでクライムオン。ガバのある傾斜を数メートル登るとハング越え。ここが1ピッチ目の核心です。ここまで順調に登っていたアリスさんですが上下左右とホールドとスタンスを探している様子が見えました。ほどなくして「ここかぁー!」の声とともに無事突破。その後は順調に上がっていき終了点に到着しました。
続いて私もクライムオン。同じくハング越えで戸惑うも上部のガバに手が届き無事突破。手も足もありそんなに被っていないように見えるのにバランスが悪い絶妙なハングだと思いました。
(アリスさん、クライムオン)
(1ピッチ目、リードをするモリッシーさん(下)、と私(上))
2ピッチ目、私のリードです。実はここまできて逃げ出したい気分。しかし、1ピッチ目を気合で登ってくれたアリスさんを前にしてそんな弱音は吐けません。いざ、発進。
出だしからホールドが届かず上がれないでいると下からアリスさんがスタンスを見つけて声をかけてくれました。何とか乗り越しそこから少し登るとつるんとしたスラブが目の前に現れました。これが核心でしょう。僅か2mほどのスラブですが手も足もどこに掛けたらよいのか迷います。左足を目いっぱい伸ばし壁に突っ張ってみるも昨日の雨で湿った壁に少し体重を乗せただけでズルっと滑り心が折れてしまいそうです。ここは安全安心A0で上がりました。その後も確実につかめるホールドを注意深く探しながら登っていきました。しばらく進むと右上にペツルのボルトが2つ並んでいるのが見えそこで支点を構築しました。
3ピッチ目、アリスさんのリード。ここからは草付きのうえ浮石が多くなります。目標になるピナクルがすぐそこにあるように見えますがロープが張ったかと思えば急に緩んだりを繰り返し、姿は見えませんが迷っている様子がロープ越しに伝わってきます。後から聞くとルートが解りにくい上に剥がれ落ちそうな岩が多く進みにくかったそうです。
4ピッチ目、私のリードです。この頃になると使ってはいけないホールドやスタンスの判断、濡れた土や草にも慣れ、見つけられるか不安だったハーケンやボルトも次々と目に飛び込んでくるようになりました。出だしこそ悪かったものの、その後は慎重に登り最後のトラバースも快適に越えることができました。
足場の良いテラスで支点を構築し、アリスさんもトラバースの中間まで来れば一安心。やっと余裕ができてこの日初めて写真を撮りました。
(4ピッチ目終了点手前をトラバースするアリスさん)
5ピッチ目、アリスさんのリード。ドームと呼ばれる最終ピッチは一度取りついたことのあるアリスさん、順調に登りトップアウト。続く私は核心部で思い切りが付かず一度テンションしてしまいましたがホールドを確認してから乗り上げると後は掴みやすいホールドが続き無事トップアウトすることができました。
私達がトップアウトするとすぐに後続のモリッシーさんが上がってきました。その後ユータさん、タッサンも無事トップアウト。5ピッチ目の基部まで懸垂下降で戻り歩いて大同心ルンゼから大同心基部に戻りました。
(5ピッチ目のトップアウト目前のユータさん)
(5ピッチ目終了点に到着するタッサン)
基部から再び登った壁を見上げると1パーティーが雲稜ルートを登っているのが見えました。大きな壁にミニチュアの人間が張り付いているように見えてあんな所に本当に自分がいたのかな、と不思議な気持ちになりました。
(大同心雲稜ルートを振り返る)
テント場に戻ると先に降りていたトシゾーさん、Qさんと再び合流、銘々に昼食とテントの撤収作業をして赤岳鉱泉を後にしました。
このところ、個人的には日帰りのフリークライミングをすることが多くテント山行もマルチピッチも久しぶりでしたが、大きな山に仲間と力を合わせて登るのも楽しいな、と思いました。
Iku